高まる「色」への関心 発注者らの認識向上を (2001年4月18日号)
 ▼「色」は人の感性や文化と深いかかわりがあり、不思議な特質を数多く持っている。例えば、簡単な絵を描く場合、水の色を「青」に塗るのはなぜなのか。薄い青をなぜ「水色」というのか。というのも、「水」自体はけっして青くはない。河川、海、湖や水道の水も本来青い色をしているわけではない。青いのは「空」であり、海が青く見えるのは、その反射である。曇った空の下の海は青くは見えない。昔の人は「水は青い」という先入観を持っていなかったようだ。江戸時代の浮世絵を見ると、海や川の水は灰色であったり、緑であったり、茶色っぽかったり、雨降りの情景では黒かったりと、「写実的」に描かれている。また、欧州でも、中世までは水は「緑」とされていた。水の色が緑から青に変わるのは、大航海時代以降だという。海図を彩色するとき、緑は森を表示するために使われ、他に使われない青が海を表すようになったらしい。
脱下請けへのカギ 戸建て塗り替え市場の確保を (2001年5月18日号)
 ▼国土交通省がこのほど発表した専門工事業の下請取引実態調査結果(速報値)によると、元請け・下請け間、および1‐2、2‐3次下請け間で、指し値による受注(発注)が横行していることが明らかになった。同調査は、昨年11月に建設経済研究所に委託して実施したもの。1999年12月までに完成した332工事を対象に、工事を請け負った700社にアンケート調査し、うち355社から回答を得た。「専門工事業イノベーション戦略」を踏まえ、@指し値による受注A工事契約前の着工の有無B工事代金の受け取り時期C前払い金・出来高払い金・完成払い金の受け取り状況D追加工事に伴う追加代金の受け取り状況――などを調査した。
戸建て市場はまず「信頼」から 消費者への十分な説明を (2001年6月18日号)
 ▼ありがたくないことだが、全国の消費センターへの問い合わせを内容別に分類すると、「工事・建築」は常に上位にランクされるという。横浜市消費生活総合センター の発表によると、12年度上半期の相談件数のうち、「工事・建築」は「不動産貸借」に次ぐ第2位である。ところが消費者の年代別では、50歳代以上で圧倒的な第1位となる。これは戸建て住宅塗り替えの顧客層とピタリと重なることを思えば、大変由々しい問題だ。一般の消費者にとって、なじみの薄い建築工事こそ、業者と顧客の間のコミュニケーションが何よりも大切ではないだろうか。
ダンピング受注の排除を 適正価格での施工を貫こう (2001年7月18日号)
 ▼先月、国土交通省近畿整備局の工事で、低入札価格調査制度による初めての排除事例が出た。寝屋川市の堤脚水路の補修工事で最低札を入れた業者の見積もりが適正でなかったため、次順位者を落札者にしたのである。調査の結果、建設残土の投棄料を見積もりに入れてなかったのが判明したという。このため整備局では、最低価格入札者と契約を結んだ場合、業者に大幅な赤字が生じ、「契約の内容に適合した履行がなされないおそれがある」(会計法第29条の6第1項ただし書き)と認め、落札を取り消すという異例の措置を執った。
シルバー市場開発なしに景気回復なし リフォームサービスの充実を (2001年8月18日号)
 ▼参院選の結果、小泉内閣は信任され、いよいよ「構造改革」の各論が具体化しようとしている。経済諮問会議の方針によると、2002年度予算は、情報技術(IT)、都市再生、環境、少子・高齢化、教育、科学技術、地方活性化の7項目で2兆円を確保し、新規国債発行額を30兆円以下に抑えるため、それ以外の歳出は5兆円を削減するとのことだ。とりわけ道路、ダム、港湾整備など旧来型の公共事業は大幅な予算カットが行われる可能性が高い。一方で、政府は7月の月例経済報告で「景気は悪化している」との見方を示すとともに、8月の景気認識の下方修正を検討している。最近の株安も加わり、これだけ景気が低迷している時期に、財政出動ではなく、緊縮政策を採るのは果たして正しい選択なのか。97年の消費税率引き上げが引き金となって始まったいわゆる「橋本不況」の二の舞になるのではないかと心配する。銀行がかかえる不良債権の中身も、すでにバブル期以後に発生したものが大半である。「改革には痛みを伴う」というが、矢面に立たされている建設・不動産・流通業で倒産が相次いだ場合に、社会に及ぼす影響を本当に理解しているのだろうか。痛みを伴う手術をして、不良債権という患部さえ摘出すれば、日本経済はかつてのように元気になるというのか。
中古住宅市場の拡大に期待 リニューアルで都市再生を (2001年9月18日号)
 ▼米国の住宅の平均耐用年数は44年、英国では75年なのに対し、日本は26年と極端に短い。また日本の場合、新築後15年経てば、事実上建物の価値が無くなるともいわれている。このため、日本では中古住宅の流通量は米国の10分の1以下にとどまっている。高齢者が最大の資産である住宅を処分して老後の資金に充てようとしても、土地の価格分しか評価されないのが現状だ。新築住宅については昨年から、「住宅の品質確保の促進に関する法律」(品確法)に基づく住宅性能表示制度がスタートしたが、中古住宅にもなんらかの評価制度の導入が求められている。
「割れた窓」が犯罪を呼ぶ  「落書き」の放置は危険 (2001年10月18日号)
 ▼『ニューウエブスター大百科事典』によると、グラフィティ(落書き)とは「歩道、壁、建物、公衆便所などにスプレーペイントなどで描かれた、イニシャル、スローガンなどの絵や文字または模様など。これらは、近所付き合いの衰退を示すものである」という。日本で最も人間関係が希薄な街・渋谷の繁華街で、いま「落書き」をめぐるトラブルが相ついでいる。とりわけ被害のひどい「宮下公園」では、昨年トイレに落書きをしていたアメリカ人ら2人が、器物破損の現行犯で逮捕されるという事件も起こった。始末の悪いことに、この連中は「アーチスト」を自称し、犯罪行為の自覚がない。このため、取り締まる側とのイタチごっこが続いている。
すべての「常識」を疑え 『ザ・ゴール』に何を学ぶか (2001年11月18日号)
 ▼グループで登山する時は、一番足の遅い人を先頭にする、という原則がある。足の速い人が前に行くと、列がどんどん長く伸び、後ろの人がはぐれることになりかねない。足の遅い人が、ボトルネックとなって、隊列に大きなばらつきを生じさせるのである。このような現象をそのまま生産現場に当てはめ、生産システムの改善を説く米国のビジネス書が、いま日本でベストセラーになっている。17年前に初版が出版された『ザ・ゴール』は、米国ではビジネス書の定番になっているようだ。試しにインターネットで調べると、今でも大手ネット書店の売上げ上位20位以内に入っている。著者エリヤフ・ゴールドラット氏は、イスラエルの物理学者という異色の経歴をもつ企業家だ。本の内容は、機械工場の工場長を主役にしたビジネス小説なのだが、著者の狙いはあくまでも小説を通じてビジネスの理論を説明することにある。日本で長く出版されなかったのは、著者が許可しなかったためだとか。「日本人に教えたら、世界経済が破滅してしまう」と本人が語ったというのも面白い。その本の邦訳版がいま頃になって出たのは、もはや日本の製造業も経済力も、世界の脅威にはならない、と博士が認めたためなのか…。
迷走する建築市場 マンションブームは終わるのか (2001年12月18日号)
 ▼日本塗料工業会の資料によると、今年4月から9月までの塗料の出荷金額は、前年同期比4・6%減少した。塗料メーカー各社の9月中間決算も大半が減収減益となった。自動車用塗料・工業用塗料などの需要先の不振が主な原因である。が、建築用塗料については、各社とも横ばいか微減にとどまった模様だ。ゼネコン各社の中間決算でも、大手は比較的堅調で、鹿島、大成建設、清水建設、大林組の4社はいずれも増収を達成している。また、マンション工事が主力の長谷工コーポレーションは、堅調な需要を受けて大幅な増収増益となった。