いかに付加価値を高めるか 顧客サービスの見直しを  (2002年1月18日号)
 ▼政府の来年度予算は、「不況下の緊縮予算」という前代未聞のものとなった。とりわけ公共投資には大なたが振るわれ、対前年度比で10・7%の減額である。同予算案を理論づけるため、内閣府は昨年末『経済財政白書(年次経済財政報告)』を発表した。全文は内閣府のホームページにも掲載されている。これによると、わが国の経済が10年来低迷しているのは、「潜在成長率が低下して供給面が弱くなっているから」だという。不良債権問題により経営資源が生産性の低い分野に張り付いており、これを構造改革によって生産性の高い分野に振り向けることで日本経済の生産性を高め、経済成長が可能になる、というのだ。不況の原因は「需要不足」ではなく、「供給の弱さ」にがあるとは、驚くべき主張だ。しかし、今の日本で「供給面が弱い」などと本気で思っているのは、霞ヶ関の一部のお役人ぐらいであろう。一昔前の「供給側の論理」が、今日のマーケットに通用するとは到底思えない。そもそも今、需要に比べて供給が不足しているモノがどれだけあるのか・・・。たまにヒットして品不足になる商品が生まれても、その生産工場は海外に移ってしまっている。構造改革によって生産性の低い産業を切り捨てたとしても、生産性の高い新しい産業へ労働移動が起こることは見込み薄だ。それより、今のように地価が下がった時こそ社会資本整備のチャンスであり、とりわけ都市インフラの整備は全産業の生産性、国際競争力の向上に役立つのではないか。来年度予算では、公共投資の費用対効果を勘案してメリハリがつけられたというが、一律カットされた印象は否めない。
ひん発する低価格入札建経研「提言」の早急な実施を (2002年2月18日号)
 ▼建設経済研究所がこのほどまとめた報告書(『日本経済と公共投資』38―日本再生に向けた公共投資改革と都市再生―)によると、現在予定価格を事前公表している都道府県・政令指定都市は36あり、昨年度の調査に比べて7団体増えている。一般競争入札の適用工事も年々拡大する傾向にあるようだ。同報告書では、こうした流れを踏まえ、「地方公共団体の入札・契約制度に関する提言」として@予定価格の事前公表では、内訳書などの提出を求め、審査後正式に落札するA第三者機関の活用による建設業者の経営力、施工能力のチェックシステムの強化B地域要件における直接的な排除システムから、間接優遇システムへの移行C価格だけからV/M(バリュー・フォー・マネー=価値対価格比)の最大化を原則とする入札を中期的にめざすべきD予定価格制度と業者ランクシステムの見直しが中期的には必要――の5項目を挙げている。  
新しいビジネスチャンス 室内環境対策の先取りを  (2002年3月18日号)
 ▼今年も「花粉症」の季節がやってきた。今年は例年以上にスギ花粉の飛散が多いそうである。今や日本人の国民病となった「花粉症」だが、その歴史は意外と浅い。初めて花粉症が報告されたのは1961年のことで、外来の植物種の「ブタクサ」が原因だったという。それが今日では日本人の10人に1人、東京では5人に1人が花粉症にかかっているそうだ。スギ花粉症はなぜか日本だけに多いそうで、アメリカでは主にブタクサ、ヨーロッパではイネ科の牧草が原因でアレルギーを起こすケースが多いらしい。
ペイントショーが成功 業界のイメージアップに貢献 (2002年4月18日号)
 ▼第3回目のペイントショーは、当初の目標であった来場者12万人には今一歩達しなかったものの、一般の入場者も多く、まずまずの成功を収めたといえるだろう。今回のテーマ「生活彩典」にふさわしく、消費者に身近な塗料・塗装の存在をアピールしたのが一般に好評だったようだ。目玉となったイベントは、今や世界的な画家として活躍しているジミー大西氏と、子供たちが作り出す巨大なジグソーパズル「コラボレーションアート」である。すでに完成したものを展示するのではなく、来場者が参加して、メインステージを飾る作品を製作していくというユニークなイベントだ。会場の中央に設けられた同コーナーでは、春休み中の小学生らが多数参加して連日にぎわっていた。また日本塗装工業会のブースでもデコラティブペインティングの実演が行われ、人気を呼んでいた。
再編迫られるゼネコン 「品質」こそ塗装業の命 (2002年5月18日号)
 ▼先月、国土交通省がまとめた「建設産業の再編の促進に関する検討委員会」の最終報告の中で、他産業に比べた生産性の低さが指摘されている。建設業の生産性(労働時間当たりの実質粗付加価値額)は、平成2年には製造業や全産業の平均を上回っていたが、平成4年頃には全産業の平均値(3703円/人・時間)程度になり、その後さらに低下して平成10年時点では3000円/人・時間を割り込み、全産業の平均(4115円/人・時間)を大きく下回るに至った。具体的に各産業のトップ企業どうしを比較すると、さらに顕著な結果が表れている。自動車メーカーの大手4社は、平成12年3月期は10年前に比べ売上高で12%、従業員数で20%それぞれ減少したが、従業員1人当たりの売上高は11%増えている。また鉄鋼尾大手4社は、同じく売上高で26%、従業員数で48%も減少したが、1人当たりの売上高は42%増えている。これに対し、建設大手4社の場合、同じ10年間に売上高で13%減ったが、従業員数は6%の減少にとどまり、1人当たり売上高は8%の減少となった。
高齢化が生み出す新市場 「NPO」がキーワードに (2002年6月18日号)
 ▼一段と進む少子高齢化    昨年の出生率は1・33と過去最低を更新し、予想を上回るペースで少子化が進んでいる。出生数も117万665人で、一昨年より1万9882人減っているという。70年代初頭の第二次ベビーブームから換算すると、もう次のベビーブームが始まるはずだが、出生数は一向に増える気配がない。世界的にも、アメリカを除く全ての先進国で起こっている若年人口の急減は、ローマ帝国崩壊時以来の大変な現象らしい。ピーター・ドラッカーは新著『ネクスト・ソサエティ』の中で、人口構造の変化がもたらす最大の影響は「市場の多様化」だと指摘している。ドラッカーによると、人口の変化は予測不能で、政府がコントロールすることもできない。そして、その変化こそが、ネクスト・ソサエティ(次の社会)を生み出していく要因だという。
「都市再生」に17地域指定 景気浮揚型の構造改革こそ急げ (2002年7月18日号)
 ▼小泉内閣の構造改革の重要な柱の1つとして「骨太の方針」にも掲げられていた都市再生事業が、いよいよ本格的に動き出した。6月1日から都市再生特別措置法が施行され、これを受けてこのほど政府の都市再生本部は「都市再生基本方針案」「都市再生緊急整備地域第一次指定案」「地域整備基本方針案」「第四次都市再生プロジェクト」を決めた。第一次の緊急整備地域には、東京・有楽町駅周辺、新橋周辺・赤坂・六本木地域、秋葉原・神田地域、東京臨海地域、新宿駅周辺地域、横浜みなとみらい地域、名古屋駅東地域、大阪駅周辺・中之島・御堂筋周辺地域、難波・湊町地域、阿倍野地域、大阪コスモスクエア駅周辺地域など17個所が指定された。
「リフォーム戦国時代」の到来 消費者が求めるサービスとは (2002年7月31日号)
 ▼堺屋太一の近未来小説『平成三十年』では、将来の日本の姿が不気味に描かれている。とりわけ建設産業の衰退は激しく、業者数はピーク時の3分の1になってしまう。それでも公共事業費の9割を占める維持管理費が下支えして、従業員数はなんとか3分の2を保ち続ける…。もちろんこのようなシナリオは、今後の日本がたどる最悪のケースだろう。だが、少子高齢化と産業空洞化に伴って、ますます新築工事が減少し、相対的に改修工事の比率が増えていくことは避けられない。欧米並みに建築工事の8〜9割が改修という時代は、意外に早くやってくるかもしれない。
前倒しされるCALS/EC 対応への準備は万全か (2002年8月18日号)
 ▼「住基ネット」が様々な問題を抱えながらスタートしたが、その構想の根本にある政府の「eーJapan」政策について、内閣官房の近藤賢二参事官による講演を聞く機会があった。eーJapan政策とは、2005年までにわが国が世界最先端のIT国家になるため、家庭への高速インターネット網(ブロードバンド)の整備、電子政府の実現などを目指す政策である。わが国のインターネット普及率は、99年12月に21・4%であったが、01年12月には44%に達し、わずか2年間で倍増している。しかし、諸外国の普及の速度はさらに早く、この間に世界13位から16位へとランクを下げているそうだ。
都市再生が緊急の課題 期待できる外断熱・内装分野(2002年9月18日号)
 ▼国土交通省の来年度概算要求では、新重点4分野に予算全体の7割を重点配分し、都市再生などの支援を図ることになった。公共投資関係費は3%削減される方針が決まっているが、新重点分野に限ればいずれも大幅な増額を計上した。4分野のうち「魅力ある都市・個性と工夫に満ちた地域社会」に4兆1057億円(前年度比23・3%増)、「公平で安心な高齢化社会・少子化対策」に4204億円(同21・1%増)、「循環型社会の構築・地球環境問題への対応」8224億円(同17・2%増)、「人間力の向上・発揮―教育・文化、科学技術、IT」に2440億円(同13・2%増)を要求している。
三井住友建設が誕生 ゼネコン再編への一歩か (2002年10月18日号)
 ▼小泉新内閣の発足後、株価はずるずると下がり続けている。竹中平蔵経済財政政策担当大臣が金融大臣を兼務することで、不良債権処理が加速すると市場がみているからだ。とりわけ金融庁の不良債権対策チーム(金融分野緊急対応戦略プロジェクトチーム)のメンバーが発表されると、株価は一段の下げで反応した。木村剛氏というキーマンの存在が、このプロジェクトチームの方向性を示唆しているためだ。日銀から外資系コンサルタントに転じた木村氏は、ことあるごとに銀行と金融庁を批判してきた。不良債権処理では、「大手30社問題」を挙げ、銀行の引き当て不足を指摘している。銀行は十分な引き当てを積んで問題のある大企業を思い切って整理せよ、という主張だ。今日の不況は「水道管にゴミ(ゼネコンなど)が詰まっているから水(カネ)が流れない」という単純明快な論理で説明している。しかし、問題企業さえ市場から退出すれば、日本経済は本当に活力を取り戻せるのか。今の状況で問題企業と銀行を一体処理すれば、デフレを加速し、「不況」から「恐慌」への引き金を引くのではないか。そのような疑問・不安が株価の下落を呼んでいるように思える。
「顧客」は誰なのか世間への情報発信を (2002年11月18日号)
 ▼元来、建設業は宣伝下手である。マスコミとの付き合いもほとんどなかった。自分たちが世間からどう見られているかも振り返ることはなかった。だが、これからの時代は、世間に対して業界と企業をどう見せていくかが問われている…建設産業専門団体連合会(建専連)の全国大会で行われたパネルディスカッションでは、これが大きなテーマになった。「マスコミは町工場は取り上げるが、建設業はスキャンダルしか取り上げない」「昔は公共工事に携わる人は大切にされたものだが、今は公共工事不要論が出ている」「専門業といっても建設業界だけの言葉で、世間は職人の世界という認識しかない」といった意見がパネラーやコーディネーターから出され、なによりも業者側からの情報発信、情報公開が求められていることが強調された。
地域一体の街づくりへ 協同組合の積極活用を (2002年12月18日号)
 ▼東京都の消費生活総合センターに寄せられる相談は、昨年度で3万1165件もあった。特に、最近は「商品」より「サービスに関するものの方が多くなっているという。戸建住宅関係の相談は昨年度604件あり、そのうち約半分の298件が「修理・補修」についてのものである。相談件数の全体からみればさほど多い数ではないが、悪質な業者が横行すると、住宅リフォームという業態自体のイメージダウンを招きかねない。最近、都から指示処分を受けた杉並区の某業者は、高齢者がドアを開けるといきなり家に上がりこみ、勝手に家屋の改修や内装工事の見積書を書き、『判を押すまで帰らない』と言って強引に契約を取った。その後、消費者が解約を申し出ると、消費者宅へ押しかけ、『違約金を払え』などと怒鳴って、解約を取り消す旨の念書を無理に書かせ、預かった工事代金の返金を拒否したという。このような極端な例は別にしても、近年さまざまな業種からリフォーム事業に参入が相次いだ結果、契約不履行や仕様間違い、誇大広告などでトラブルがひん発している。