「情報」を制する者が勝者に 消費者とのコミュニケーションを (2003年1月18日号)
 ▼今年の干支の「未年」には、かつて1991年の湾岸戦争、1979年の第二次石油ショック、1967年の第三次中東戦争、と中東で大事件が起こっている。今年も、イラクをめぐる情勢はいよいよ緊迫してきた。もし、戦争が起これば、世界中にどれだけの影響が及ぶのかは計り知れない。業界への影響が大きい石油価格も高騰しており、さらに今後大きな変動がありそうだ。見えない戦争「情報戦」はすでに始まっていて、米軍はイラク政府の要人に寝返りを勧めるEメールをせっせと出しているらしい。また、湾岸戦争と同様、今度も米国は徹底した情報統制を行うことは間違いない。湾岸戦争では、重油にまみれた鳥の写真が発表され、全世界に衝撃を与えた。だが、のちにこれは戦争とは何の関係もないもので、反イラクキャンペーンのための情報戦の一つであったことが発覚した。フランスの批評家・ボードリヤールは、湾岸戦争は起こらなかった、とさえ言った。公表された映像は実戦ではなく、全部シミュレーションだったのではないか、という皮肉だ。
ISOは役に立つのか 取得の目的を明確に (2003年2月18日号)
 ▼ISO9000sは、もともとイギリスの品質保証の国内標準を国際的標準に採用したものだ。TQCとの違いは、TQCが生産者の立場から品質管理を行うのに対し、ISOはあくまで「顧客」の立場から要求する品質を確保する仕組みである。認定取得数は、全世界で51万616件(2001年11月現在)。このうち発祥の地のイギリスが13%のシェアを占めて最も多く、以下中国、イタリア、ドイツ、米国の順。日本は2万7385件で世界第6位である。一方、環境マネジメントの標準であるISO14000sは、日本が8123件で世界シェアの22%を占め、堂々の世界第1位になっている。また、ISO9000s、14000sともヨーロッパが全取得件数の約半分を占めている。
深刻なシックハウス問題 規制へ速やかな対応を (2003年3月18日号)
 ▼「シックハウス症候群」とは、もともと和製英語だったらしい。70年代に欧米で「シックビルディング症候群」が問題になったが、日本ではオフィスビルよりも住宅で症例が多発したため、欧米のネーミングにならって「シックハウス」と名づけた。それが「逆輸出」され、すでに英語にも定着してしまったという。コトはそれだけグローバルで、やっかいな問題だといえる。70年代のオイルショック以降、建物が省エネのために気密化し、さらに新建材の普及などが原因となり、新しい文明病を生み出したのだ。
(塗装業の新分野 「湿式外断熱」に期待 (2003年4月18日号)
 ▼「発泡スチロール」といってまず思い浮かぶのは、電気製品などの梱包材だろう。日塗装がこのほどまとめた『建築リフォームにおける湿式外断熱工法分野進出事業調査報告書』によると、日本では発泡スチロール(EPS)の用途の90%が魚箱、包装材などに使われている。しかし、欧米では80%が外断熱壁用であり、特にRC造建築物の外断熱工法では60〜70%に使われているという。日塗装が新分野事業として推進している「湿式外断熱工法」は、簡単に言えば、この発泡スチロールを外壁面にくまなく張りめぐらし、その上をグラスメッシュで覆い、最後にテクスチャーペイントで仕上げる工法だ。各材料の施工は「塗る」「張る」「詰める」の塗装の基本技能で対応できる。
外断熱の普及は社会的使命 施工には万全な配慮を (2003年5月18日号)
 ▼最近、外断熱に関する本が数多く出版されるようになってきた。『「いい家」が欲しい』、『日本のマンションにひそむ史上最大のミステーク』、『外断熱は日本のマンションをどこまで変えるか』といった本では、内断熱による結露被害の恐ろしさを指摘していて衝撃的だ。
外断熱の普及は社会的使命 施工には万全な配慮を (2003年6月18日号)
▼幕末、萩(長州)藩の藩主・毛利敬親は「そうせい公」と呼ばれた。家臣が何か提案するたびに「そうせい」と丸投げしたからである。「バカ殿」の典型のように言われているが、実は時代の先覚者だったのではないか。周布政之助、高杉晋作といった若く優秀な人材に活躍の場を与え、結果的に明治維新に大いに貢献した名君だった、と評価されて当然だろう。殿をバカ殿にするか名君にするかは家臣次第である。同じ丸投げ型でも小泉首相はどうか。世の現実を知らず、実行力にもアイデアにも乏しい連中に経済政策を丸投げした結果、改革は遅々として進まず、経済は底なしのデフレ不況に陥ってしまった。それでも50%近い支持率を維持しているのは驚異だが、これはテレビ受けするパフォーマンスのせいだろう。事実、年齢階層別の支持率では、企業経営に責任のある50歳代が最も低く、逆に若年層や高齢者が高い「U字型曲線」を描いている。テレビをよく見る世代へのイメージづくりには成功したが、経済政策の失敗は隠しようがない。空前の高失業率とデフレをどう克服するのか。どうやら殿の取り巻き達はもはや打つ手がなく、「円安」という神風が吹くのをただ待ち望んでいるだけのように思える。
重責を担う「基幹技能者」 自立と新分野開拓が使命を (2003年7月18日号)
 ▼「基幹技能者の確保・育成・活用に関する基本指針」が旧建設省から通達されたのは、96年(平成8年)のことである。その前年の「建設産業政策大綱」と「建設産業の構造改善プログラム」を踏まえて、「良いものを安く」供給するため、技術と技能の間をつなぎう、高い生産性を実現する人材を確保・育成することが狙いであった。同指針によると、基幹技能者とは職長の一連の作業の流れについて高度に処理する能力をもつ者で、@現場の状況に応じた施工方法等の提案、調整A現場の作業を効率的に行うための技能者の適切な配置、作業方法、作業手順等の構成B生産グループ内の一般の技能者の施工に係わる指示・指導C前工程・後工程に配慮した他の職長との連絡調整――などの役割りを担うとしている。熟練の技を持つことはもちろん、それに加えて、現場の原価管理、安全管理などのマネジメントができ、さらに技術者に代わって技術的な問題も処理できることが求められる。つまり、上級職長として、技能者のトップに位置する優秀な技能者のことである。すでに電気工事、造園、機械土工、建築板金、圧接、橋梁、鉄筋、サッシ・カーテンウォールなど8業種で基幹技能者の育成が始まっており、それぞれの関係団体の主催による認定講習会が実施されている。
待ったなしの環境対策  チャンスとピンチが同時に (2003年8月18日号)
 ▼政府の来年度予算の概算要求基準がこのほど閣議了解された。「公共投資関係費」は前年度比3%減の8兆6千億円だが、国土交通省では重点4分野への集中化によって、メリハリの利いた予算をめざすようだ。重点4分野とは@個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方A公平で安心な高齢化社会・少子化対策B循環型社会の構築・地球環境問題への対応C人間力の向上・発揮―教育・文化・科学・IT――の各分野である。このうち、@の分野では都市再生関係のプロジェクトに重点的に予算配分がされそうだ。03年度予算でも「三大都市圏環状道路の整備」「交通連携」「水辺都市の再生」「民間都市開発支援」といった分野では、前年度比2けた増の予算配分がなされている。また、Bの環境関連分野では「グリーン庁舎(環境配慮型官庁施設)の整備推進」が注目される。03年度の予算規模は104億円ほどだが、前年比で26%も伸びている。今年度は新規6施設、継続8施設の計14施設で工事が行われるが、来年度以降もさらに拡大していくことが予想される。
新しい塗装の時代の到来 多様な改修のニーズに対応を (2003年9月18日号)
 ▼2年に1度の全国建築塗装技能競技大会が札幌で開かれた(別項記事)。昭和43年、東京で第1回目が開催された頃は、課題も油性ペイント塗り、エマルションペイント塗り、クリヤーラッカー塗りであったが、今大会からは開発されたばかりの「フレックスコートスウェード調仕上げ」が初めて採用された。また、従来の平面塗装から、立体的的な造形を駆使したフレックスコート自由課題が大会の看板としてすっかり定着し、オリジナリティーあふれる工芸的作品が次々と完成する様は、新しい塗装の時代の到来を感じさせるものであった。今回の自由課題のテーマは「地方自治体の庁舎及び市民ホール等の内壁面に創作する」というものだが、技術・芸術性の面で優れていても、「生産性」「需要性」の評価が低ければ、高得点が得られない。実際、入賞作品以外でも優れた作品は多く、「いずれも甲乙つけがたい」というのが審査の実情だったようだ。
モラルの低下が犯罪を招く 「落書き消し」で都市再生を (2003年10月18日号)
 ▼「水と安全はタダ」―そんな日本の「神話」がいよいよ崩壊してきた。水はお金を払ってミネラルウォーターを買う欧米式のライフスタイルが定着してきたし、安全を脅かす犯罪の件数もありがたくないことにここ数年急上昇している。警察庁の統計によると、昨年の刑法犯の総数は285万件で、7年前の95年(178万件)に比べると、60%も増加している。すべての犯罪が増加傾向にあるが、特に最近は在日外国人による侵入盗が急増しているという。昨年の住居侵入の件数は3万3千件を超え、7年前のほぼ3倍に、侵入強盗の事件数も2・5倍に増加した。その影響により、防犯用品へのニーズはかつてなく高まっているようだ。ガラス面に内側から貼って侵入を防ぐ防犯フィルム、マンションのドアを外からリモコンでロックできるものなど、様々な製品が発売されている。
労働災害の絶滅を 心配される安値受注の影響 (2003年11月18日号)
 ▼『徒然草』に「木登り名人の話」というのがある。昔、中国に木登り名人がいて、やがて若い弟子をとった。弟子が木に登るときや木の上で作業しているときは一言も声をかけなかったが、地上まであとわずかのところまで降りてきたとき、名人は初めて弟子に「気をつけなさい」と注意した。人は「危険な場所にいる」という自覚があるときは集中力が高まっているが、事故は往々にして安全に思えるところ、集中力が緩む瞬間に起こる、という教えである。実際、転落事故の7割は2メートル以下の低所で起こっているというデータもある。「低いところだから安全だろう」という気の緩みが事故につながるわけだ。
独禁法改正に疑問 ダインピング対策こそ急げ (2003年12月18日号)
 ▼四半世紀ぶりに独占禁止法を改正する独占禁止法研究会の報告書に、経済界から強い批判の声が上がっている。今回の報告書のポイントは、まず違反した企業から徴収する課徴金の大幅な引き上げである。従来課徴金は「違反によって企業が不当に得た利益を徴収する」という考え方に基づいて、対象商品の違反期間の総売上額の6%(中小企業は3%)が原則であった。今回の報告書では、これに加え、「違反行為によって消費者や他の企業が被った社会的損失」を上乗せするというものだ。具体的な引き上げの幅は明らかにしていないが、添付資料の中で過去5年の主要なカルテル事件の例を引き合いに出し、公取委が審査開始後に価格が平均20・97%下がったいう数字を挙げている。また、公共事業にPFIを導入した結果、入札の場合に比べ契約額で平均21・7%削減できたとし、「PFIによる負担額との差である20%程度が談合による損害と推定できる」と付記した。さらに、指名競争入札から制限付一般競争入札への制度改革を行った長野県、宮城県では、それぞれ平均落札率が20・9%、15・5%下落したことを挙げ「談合が困難となり、15%ないし、20%程度落札率が下がる」と指摘している。これらの例から「20%」という数字がメドになりそうだと読み取れる。さらに、最初に通報した企業の課徴金は全額免除するなど、企業が自主的に通報した場合に課徴金を免除または減額する「措置減免制度」も設けることにした。つまり、海外でよく行われる「司法取り引き」の導入だ。