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◆日本塗装時報 2004年10月18日発行 1818号掲載記事◆

■「今、現場で何が起きているのか―建設専門業の挑戦」

 建専連の全国大会第3部では、「今、現場で何が起きているのか―建設専門業の挑戦」の大会テーマを中心に、パネルディスカッションが行われた。安値受注がもたらした技術・技能の空洞化や、下請けを直撃する瑕疵責任の問題など、いま専門工事業が直面する重要課題を取り上げ、その実情と対策を論議した。

北浦年一氏

高宮春夫氏

梅田 巌氏

大森文彦氏

工事の品質低下が深刻に
西山 つい先日、大阪府建団連会館内に会長室を設置され、常駐されている北浦さんから、まず技術と技能の空洞化についてお話ください。
北浦  市場規模が縮小する中で、業者数が淘汰されるのは仕方がないと思います。しかし、良い業者が残って不良業者がなくなるなら良いのですが、今の状況ではそうなっていません。人を育てるとお金がかかり、そんな会社がダメになる。逆に何も努力しない会社が良くなる。
 いま何が起きてるかと言うと、常用の職人を減らして、下請けにしているのが現状です。職人の年収も3年前までは500万円あったものが、どんどん下がり、今は200万円台にまで落ちている。 このような状況で「夢を持て」と言っても、説得力がない。今起こっているのは、本当の意味の「競争」ではなく、値段の天びんでしかありません。
高宮  私どもの仕事は建築の中でも最終段階を受け持っています。一見派手な仕事ですが、ごたぶんにもれず時間と予算がない、ただし期日だけはあるという非常に難しい業種です。ただし、われわれの仕事は、建物がある間はずっと残ります。それを見るたびに感激があり、これだけ恵まれた仕事は他にないともいえます。
 しかし、長引く不況により撤退する会社も増えています。不況の風は個人の力ではどうしようもないぐらい強く、こうして同業者、専門業者が集まり智恵を出し合って前に進んでいるのが現状です。
 いろいろ問題はありますが、根幹は契約の問題が一番大事だと思います。ただ、われわれの業界は長い付き合いがあって、ついそれがおろそかになりがちになる。また、あまり細かく打ち合わせをやっていると工期がなくなります。そうこうしているうちに時間がなくなり、小さい打ち合わせも大きい打ち合わせもやる暇がなくて完了するというケースが多いのではないでしょうか。
梅田  私どもの仕事は構造物の基礎杭を施工するという人目に触れない業種です。打ったあとは、見ることができないのが問題です。10年前、20年前に比べて現場の施工管理がどうなのかというと、決して良くなっているとは思いません。これだけ技術が進んでいるのにもかかわらず、現場で一番重要な施工管理がむしろ以前より後退しているように思えます。特に杭施工については、製品検査が難しいということもあり、現場施工が大切なわけですが、組合員からの情報でも施工が悪くなっているという話が多い。
 建物の建て替えが非常に多くなってきてますが、その時に既存の杭を引き抜くという仕事があります。工場で管理されたものは、ほぼ施工時の状態を保っているが、現場でつくられたものは20ほどしか経ってなくても問題のあるものが多い。「よくこれで持ったな」という杭が出てくる。ひどいのは、途中で杭になってないのもあります。
 現場の施工管理には身が引き締まる思いですが、最近はゼネコンさんもコスト削減のため現場管理の社員が少なくなっている。そのため、われわれ専門業者が自主管理することになる。技術、安全の管理をわれわれがやると、問題はそれだけの代価がいただけないということです。能率を上げてコストダウンしようという施工が今なされているが、施工管理はお寒い感じがする。
 基礎は一番大事なはずなのに、コストに合った施工しかされていないというのは甚だ残念です。

下請けにも法的責任が
大森 つい最近、「下請代金遅延等防止法」が改正されました。今回の改正で、建設業の設計、コンサルタント関係にも適用されることになりました。しかし、建設業法でもほぼ同じような規定があります。そもそもこうした法律ができた背景は、特定の親企業に依存し長期間継続的な取引関係を持つと、上下関係が生じて弊害が出てくるためです。ちなみに、アメリカでは、元請けも下請けも特定の企業に依存することはほとんどないそうです。
 建設業界を取り巻く法的環境は激変しています。この10年、本当に様変わりしました。現在、3大専門訴訟といわれるのは、知的財産、医療、建築です。東京や大阪地裁でも建築専門部といのが発足して集中的に事件を取り扱っています。東京地裁では年間300件ぐらいに達しています。訴訟が起きるのは決して良いわけではありませんが、社会現象としてとらえると、業界が認知されてきている証拠、社会が注目している証拠であることは間違いありません。
 訴訟の中味を見ると、下請けが元請けを訴えるケースもあります。瑕疵責任も、従来は下請けだけに負わされてましたが、設計者や元請けの責任を峻別する傾向にあります。さらには発注者の責任まで問われています。しかし、元請けが悪かった場合でも、最終的には下請けの法的責任に発展していきます。つまり、責任関係を追求していくと、最後にたどりつくのは下請けです。ということは、今社会的に注目されている建築訴訟は、下請けにつきつけられている現実的な問題であると言っても過言ではありません。
西山  いま現実に賠償保険が全部パンクしようとしています。従来は設計のミスであってもゼネコンがかぶってましたが、今はそれだけの余裕がない。そのため表面化して保険で払わそうとなってきたためです。そこで、それぞれの企業に「契約」が厳しく問われるようになってきました。契約がしっかり結ばれないことには人を育てる余裕もない。そこでどうやって解決をすべきなのか、しようとされているのか、北浦さんからお話をおうかがいします。
北浦  最近は、事故があれば職人にまで罰金刑がきます。つき詰めれば全部職長のところにきます。一方的な供述だけで判決が下ってしまいますが、職人は親父をかばい、親父は名義人をかばい、虚偽の申告になるケースも多いでしょう。
 私どもは躯体で建物の主軸を担当しています。しかし、今はその主軸が揺れています。どんな産業でも売上げの40〜60%は職人に分配されるものです。ところが、建設業はバランスが悪く、職人は冷遇されています。
 昨年、コンクリート打設技能のコンクールが初めて行われました。今後は他の職種にも波及していくでしょう。このような職人を表彰する制度を拡充し、職人が報われる業界にしなければなりません。
西山  現場の施工管理の上でも責任の明確化が問われ、契約は大事になってきますが、その辺の現状はどうでしょう。
梅田  施工管理の責任はどちらにあるのか、一般的に言うとゼネコンでしょうが、杭だけについては、施工会社になることは明白です。それだけの管理をしているかというと、今は過渡期ではないかと思います。それを責任をもってやれる業者が生き残れるのではないかと思っています。いつまでも安ければ良いという時代は続かないでしょう。
西山  責任施工への要求がますます強まると、法的に賠償を問われることにイコールとなっていくのでしょうか。
大森  責任施工という言葉は法律用語ではありません。もともと下請負契約というのは全部責任もってやるという契約なんです。大事なのは、請け負う時に、何を請け負うことをはっきりすることです。逆に何に対して責任を持つのかがはっきりしないままやっている。だから何かあると、責任の押し付け合いが起こる。本当の専門家は、できることとできないことをはっきり分けられるはずです。元下関係で言うと、元下の思いが一致していないからトラブルになるのだと思います。
西山  それはバブル経済の前ぐらいから一致しなくなったのでしょうか。
梅田  確かに昔は元下一体になって良い仕事をしようという思いがありました。それが最近は施工管理は下請けまかせになってきている。
 現場での作業は元請けの管理がないため、仕様が守られなくても分からない。杭は見ることはできないし、検査もできません。
西山 仕上げの場合、工期が限られてますが、仕事を取るときには、「できない」とは言えないでしょう・・
高宮 その問題はいつも自問自答しています。というのも、「予算がないからところどころ空けておこうか」という仕上げはできないんですね(笑)。
 こういうITの時代とかであっても、必要なのは「熟練工」なんです。ただ張れば良いというものではありません。熟練工と1年生ではその差は歴然としています。
 仕上げとしての手抜きはできないものだから、不幸にして倒産するところも多くなっています。


◆ 日本塗装時報 2004年10月18日発行 1818号掲載記事◆

■日塗装 ペインテナンスキャンペーン 施工実績は2130件に

  (社)日本塗装工業会(河野玉吉会長)は10月13日午後、東京・浜松町東京會舘で第197回理事会を開き、▽04年度上期事業報告▽同財務報告▽新規加入者承認・退会者報告―などを審議した。
 事業報告では、品質委員会(乃一稔委員長)から第5回ペイテナンスキャンペーンの施工件数(6支部未集計)が報告された。今回はすでに2130件に達し前回(1787件)を上回った。件数が多い支部は北海道(329件)、神奈川(283件)、秋田(163件)、岩手(86件)、愛知(84件)など。また、今回からは施工件数の上位10社を表彰することにした。
 このほか理事会では▽(総務委員会)『塗装ハンドブック』は「環境対応」などを加え年内に発刊▽(技術委員会)非塩素系剥離剤をロックペイントが販売代理店として米国から輸入▽(経営委員会)経営後継者研修は来年2月11〜13日金沢で開催▽(需要委員会)新しい工事指導員研修会を来年1〜3月ブロック別に開催▽今年度の海外研修は河野会長を団長にオーストラリアで実施―などが報告された。
 新入会・退会者報告では、前回常任理事会開催時から1社が入会、14社が退会し、10月13日現在の会員数は3232社になった。
 理事会修了後、引き続いてオープン懸賞の抽選会を開催。今回は応募総数2万1378通のうち、有効応募数1万6531通から30人を選び、デジタルカメラをプレゼントした。

■「自己変革により体質改善を」 建専連全国大会開く

 (社)建設産業専門団体連合会(山崎善弘会長)の平成16年度全国大会は10月7日午後、東京国際フォーラムで開かれた。
 開会にあたり、主催者を代表して、山崎会長は、「本日の退会は通算して5回目となるが、メインテーマを『現場でいまなにが起きているか』サブテーマを『建設専門業の挑戦』とし、建設専門業界が果たしている役割を広く、正しく国民にアピールし、信頼と期待に応えるとともに、建設産業の健全な発展を目指して本大会開催するものである。我が国経済は、石油高騰などはあるものの、輸出関連業界はデジタル家電業界を中心に企業活動が活発化し、これに個人消費も加わって、回復基調に入っている。
 一方、建設業界においては、建設投資が縮小する中で、経営環境が激変し、過剰供給構造の是正など大きな変革が求められている。
 建設専門業者は、建設ものづくりの中核的担い手としての誇りと責任をもって、現実の諸問題に真摯に取り組み、自己変革を果たすことによって、建設産業全体の体質の改善、構造転換を実現するとともに、建設政策活動を通じて、豊かでうるおいのある国土づくにに貢献しなければならない。
 私ども建専連は、建設専門業界を代表する政策提言集団として、個々の業種団体を越えた横断的業種課題と取り組むとともに、昨年度設置した全国10ブロックの地区建専連とともに、連携を強化し、技術と経営に優れた建設専門業の育成、および技術・技能者が生涯を託せる建設産業づくりなどに向け、諸活動を積極的に展開していきたい」と力強くあいさつ。
 来賓を代表して、蓮見進国土交通副大臣、衛藤晟一厚生労働副大臣、平島治日本建設業団体連合会会長が祝辞を述べた。
 引き続いて第二部の基調講演に移り、「公共工事は悪なのか―国土学への挑戦」のテーマで、大石久和(財)国土技術技術センター理事長が講演。このあと、パネルディスカッションを開催した。

■大塗装 環境美化運動に協力 JR京橋駅で落書き消し

 大阪府警生活安全部少年課は10月2日、「京橋ふれ愛クリーン作戦」と題して、JR京橋駅周辺の落書きを除去するキャンペーンを行い、大阪府塗装工業協同組合(石渡敏一理事長)が塗装作業の指導に協力した。
 今回は、地元桜宮中学校の生徒や父兄、少年サポートセンターの補導少年、少年補導員、大学生ボランティア、ガーディアンエンジェルス関西本部員ら200人以上が参加。
 作業に取りかかる前に、全員が京橋駅前に集合して開会式を行った。まず主催者を代表して大阪府警少年課代表や都島警察署長らがあいさつ。その中で「街にはんらんする落書きは、法秩序軽視の表れであり、治安悪化の前兆である。これを地元少年やボランティアとともに消していくことによって、地域の環境美化を実現するとともに、社会ルールを守ることの大切さを考えていただくことが目的である」とイベントの趣旨を説明した。
 続いて田伏健一大阪府塗装工業協同組合副理事長が「塗料で汚した壁を塗料で美しくするという作業だが、同じ塗料でも使い方によっては、たいへん不愉快な思いをする。本日は環境にやさしい水性塗料を使って仕上げていくが、この機会に塗料の正しい使い方を学ぼう」とあいさつ。大内一生理事がローラーの使い方などを説明した。
 このあと、チームごとに分担して作業に取りかかり、JR環状線高架下側壁や自転車駐輪場の壁、約116平方mの落書きを消したあと、ローラーできれいに塗装した。
 作業中は、「いいいろ塗装の日」の幟を立て、テッシュペーパーを配るなど、環境美化に取り組む塗装業界の姿を通行人にアピールした。
 イベントの模様は、NHK総合テレビも取材し、ローカルニュースで放映された。

■大阪府技能競技大会 塗装5選手が出場

 (社)大阪府技能士会連合会主催の第16回大阪府技能競技大会(技能グランプリOSAKA)は9月25日、大阪府摂津市のポリテクセンター関西で開催された。
 技能士の技能向上と技能の重要性をアピールするとともに技能士の社会的地位の向上を目的として、平成元年より開催されているもので、大阪府塗装技能士会からは5選手が参加、日頃磨いた腕を競った。今回は▽つや有り合成樹脂エマルションペイント刷毛塗り仕上げ▽防水形外装薄塗材多孔質ローラー仕上げ―の2課題で競技を行い、下地処理から模様付け、仕上がりまでの各工程を総合的に評価した。

【参加選手】
三藤徹広(和田塗装)/ 岩田良彦(石渡英雄塗装店)/ 森重博(三木塗装店)/ 田中勲(竹延)/ 永原敏己(加藤塗装店)

■広島の大型住宅地に エスケーの色彩計画が採用

 広島市内の大型住宅地、東亜祇園ニュータウン「春日野」の第一期工事26棟に、エスケー化研のカラーデザインシステムによる色彩提案が全面的に採用された。
 従来、外壁にサイディングが使われることが多かったが、最近では個性的な空間を演出する塗材への関心が高まっている。
 色彩計画を担当した同社のカラーデザインセンターでは、建物だけでなく、街全体をコーディネートすることにより、個性を生かしつつ全体が統一感のある調和のとれた街並みを提案。施主や住人から好評を得ている。
 今回、外壁に採用されたベルアートは、同社の主力装飾仕上塗材の一つで、ここ数年2ケタの成長を示しているヒット商品。特長は▽100色にもおよぶ標準色と51種類のパターンバリエーションがあり、自由な発想で個性的な空間を演出できる▽エコマーク認定品で、F☆☆☆☆表示可能な環境配慮型製品―など。このほか同シリーズには、耐久性・低汚染性に優れる「ベルアートSi」、VOC1%未満でホルムアルデヒドを吸着・固定化し、調湿機能を持つ「同IN(アイエヌ)」がある。


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