◆ 日本塗装時報 7月18日発行 1773号掲載記事◆

■ネットは業界の変革者になるか 〜建設・リフォームにECの波〜

続々立ち上がる建設ECサイト
 国土交通省は今年10月より直轄事業で電子入札を開始する。今年度は大規模事業を中心に100件程度だが、2004年には国土交通省の全公共事業約4万4千件で実施。2010年までに国内の全ての公共工事約40万件が対象になる。米国では一部の州で実験的に導入されているが、国全体として本格的に電子入札に取り組むのは、世界でも日本が初めてである。一方、政府が今年3月に策定した「Eジャパン構想」では2005年までに、4000万世帯に高速インターネット網を普及させる計画だ。このように建設業界へのインターネットの導入、一般社会のITインフラの整備が進む中、民間でも様々な建設ECサイトが立ち上がり、ネットを使った新しいビジネスモデルの試行が始まっている。これらは従来の建設生産システムや業界慣習に変革を迫るのか、実情をレポートする。


大型プロジェクトが始動 シーエムネット
 森ビルとソフトバンクが出資するCMnet(シーエムネット)は、発注者、設計事務所、専門工事業者、材料メーカーらが参加し、インターネット上で建設プロジェクトの受発注を行うもの。分離発注方式やCM方式の活用により、高品質・低価格を実現するのが狙い。今年4月から会員を募集しすでに200社以上が登録、塗装業界からも6社が参加している。
 入会には帝国データバンクによる審査に合格する必要がある。
入会金は10万円、年会費は12万円。

 メリットとしては、施主側では▽施工者の選択肢が増え、新規優良企業が発掘でき、迅速に決定することができる▽建築コストや決定プロセスが透明になり、多くの会社から見積を取ることで競争原理が働き、コストダウンが実現できる――など。
  施工者側では▽工事案件情報を容易かつ広くつかむことができる▽営業活動経費が削減できる▽自社のもつ高度な技術・新しい技術を広くアピールできる▽共通BQにより見積の簡素化が図れ、事務経費が削減できる▽共通資材の共同購入・共同物流ができる▽逆オークションによる余剰在庫・資機材・人材の有効利用が可能――としている。

 国土交通省の実証実験(森ビル2000坪の改修工事)を3月に終え、4月から本格稼動に入った。プロジェクトでは、マンションの大規模修繕工事や大型ビルの外壁塗装工事なども発注されている。
  アドレスは次の通り。 http://www.cmnetcorp.com


建築工事全般へ拡大 コンストラクションEC・ドットコム
 ゼネコン大手5社とNTTデータ、日本オラクルが参画する建設マーケットプレースが「コンストラクションEC・ドットコム」。当初仮設資機材・建設機械の調達を対象にしていたが、4月以降は建築工事全般へ拡大した。そのモデルプロジェクトとして、品川東口B−3地区ビル(仮称)の新築工事を積極的に活用することにしている。
 参加会員は100社を越えており、4月以降6月20日までの見積もり件数は220件、成約件数は10件である。バイヤーが見積もりを依頼し、サプライヤーが商品・工事の見積もりを提案するサービスが中心だが、逆にサプライヤーからバイヤーに売り込みもできる。このほか、CI―NET対応サービスや与信・決済サービス、余剰品・在庫品オークションなども行っている。 「画一的で柔軟性がない」と指摘されていた料金体系も改訂された。入会金はIDの付与数によって5万円(2ID)から100万円(3000ID)まで、月会費はゼロ(成約料率1%)から10万円(同0・1%)となっている。
 今後、一層のの事業拡大を図る予定で、2003年度末に1100会員、売上23億円を目標にしている。

 アドレスは次の通り。 http://www.construction-ec.com


建設総合情報サイト ケンセツ21
 大塚商会が運営する「ケンセツ21」は、建設総合情報サイトとして、建設CALS/EC情報、建設業者情報、イベント情報などを提供している。  マイクロソフトとCADソフト大手のオートデスクが協賛し、「オンラインにおける建設業の一大コミュニティとして成長させる」という将来計画をもつ。
 会員制で「一般会員」「プレミアム会員」に分かれ、それぞれの区分によって利用できるコンテンツなどが異なる。一般会員は無料だが、プレミアム会員は月2千円(キャンペーン期間中は半額)。

 一般会員の場合、企業詳細情報検索、建設資材検索、自社PRページの作成、NexusMap地図配信、掲示板、建設CAD用部材データのダウンロード、ISO情報、ケンセツ実証実験フィールドなどの情報サービスが利用できる。  ISO情報では、実際の取得過程の事例紹介や、自社の「ISO度診断テスト」、無料のISOコンサルティングなどを行っている。実証実験フィールドでは、大塚商会本社ビルの新築工事を題材に建設CALS/ECに関する各種の実証実験を行う。民間企業初の試みで、本格的なCALS/ECの到来を前に実際の成功例、及び失敗例をレポートする  また、プレミアム会員では、電子公募調達やCADデータ変換などのサービスが利用できる。 大成建設が仕掛ける新サービス 建物リニューアル協会 P中国地区建物リニューアル協会のトップページ  ゼネコンのリニューアル市場への参入が相次ぐ中、注目されるのが「建物リニューアル協会」である。
 これは大成建設と該当地域の建設業者、専門工事業者、メーカーが連携して、ホームページ上に建物リニューアルに関する技術情報の提供、診断、見積、施工会社の紹介などを行うもの。第1弾として中部および中国地区から立ち上げ、すでに北海道、東北、北信越、関東、中部、関西、九州の各地域でもスタートしている。
 ホームページを通じて問い合わせがあった場合、その内容により対応メンバーを選定。選定メンバーに顧客データを送付する。また顧客へは選定メンバーに関する情報をEメールで送付する。その後、選定メンバーが直接顧客に対応する仕組み。大成建設では、顧客情報のデータベース化を行い、工事完了後のフォロー体制を万全にするという。  とりわけ注目されるのは、各地区ともホームページ上で新しく施工協力業者を募集すること。新会員は申込者から実績によって選ばれ、指定作業服の着用や施工品質の維持、一括再下請けの禁止などが義務付けられる。会費は入会金と年会費が必要で、紹介工事を受注した際には斡旋手数料を支払う。  アドレスは次の通り。
(2009/3/26修正)http://www.kensetsu21.com/



 1万5千社が参加 リフォームネット
  ティアイエスコーポレーション(東京都新宿区)が開設しているリフォーム情報総合サイト「リフォームネット」は、一般消費者とリフォーム業者、工務店、専門工事業者間のネットワーク化を目指している。 消費者自らが、地域の地図や業種からリフォームを依頼する業者を自由に選ぶ仕組み。業者の登録には登録料、月会費が必要だが、工事が成約しても仲介手数料は不要である。
 ユーザーのアクセス数は公表していないが、登録企業には半年に1回アクセス情報が提供される。広告はクリック保証型のバナー広告、メールマガジンへの広告、ダイレクトメール広告などが用意されている。 人気のあるコンテンツを収録することでアクセス獲得に努めており、風水、ガーデニング、新製品情報ほか、独自の取材情報などを提供している。
会員数は7月24日現在で1万5970社。
 アドレスは次の通り。 http://www.reform-net.com/  


助っ人職人を紹介 ビルダーネットワーク
 ネット上で職人の貸し借りをするというユニークなサービスを行っているのがビルダーネットワーク(東京都渋谷区)。 ホームページ「ビルダーネットワーク、「助っ人職人情報」と「請負工事情報」の2つの内容で構成され、会員登録すれば利用できる。職人情報は1日単位、工事情報は旬単位で掲示板を設け、工期に合わせて詳細な情報を書き込めば、会員どうしで職人の貸し借りや工事の外注ができる仕組み。 広告収入で運営するため、法人の建設業許可業種であれば登録・利用は無料。 ただし、職人の貸し借りを行う場合に、職人が相手先での指揮監督を受けて仕事を行う場合は「派遣」となり、労働者派遣法に抵触するおそれがある。このため、職人の貸し借りを行う場合には請負契約を締結するだけではなく、職人を貸した建設会社が責任を持って自社の職人についての指揮監督を行う必要がある。
 アドレスは次の通り。(2009/3/26修正)http://www.jahbnet.jp/  



家づくりのマッチングサイト ハウスコンペ
 ハウスコンペは、コンペを利用して建築家を紹介するマッチングサイト。1997年に開設され、NPO的な活動を行っている。すでに43件の施工実績があり、成約率は70%を越える。建築家は1241人、施工業者は48人が参加している。 案件の公開から契約までの流れは次の通り。
@依頼者(施主)が申込書と必要書類(写真・敷地図等)を送付し参加手数料1万5千円を振り込む。
A募集要項を公開  依頼者本人は匿名が原則。賛同設計者のみに閲覧が許可される。
B設計者からの質問に回答  掲載期間中に設計者から依頼者への質問をメールで受付け、依頼者が回答する。
C現調会(オプション)  設計者により依頼者の意向や人柄を伝えるため、計画敷地で簡単な質疑と雑談を行う。
D提出案を受け取る 集まった提出案をまとめて送付する。提出案が5案に満たない場合、手数料は返却される。
E検討絞り込み  設計者選考は依頼者独自に行う。その過程でメールで設計者に自由に質問できる。  
F設計者と面談の後、決定・契約する。
 アドレスは次の通り。 http://www.housecompe.net/
 なお、関西地区では、同様な趣旨で、「ハウスコンペWEST」を運用している。
 アドレスは次の通り。 http://www18.big.or.jp/~hcwest/